【手続法2条/12条~14条】不利益処分 通則【ひっかけ対策あり】

行政手続法
  • 不利益処分に対象になるものってなに?
  • 事実上の行為とは?
  • 拒否処分の理由の提示は必要か?

 

本記事の内容
  1. 「法律上」と「事実上」の見極め方
  2. 処分基準と審査基準を定めることの「義務」「努力」の比較
  3. 「聴聞」と「弁明の機会」の使い分け
  4. 理由の提示「原則~例外~例外の例外」
  5. 各種、注意点やひっかけ問題対策

このパートの注意点

ここは結構読み飛ばしてしまうパートですよね。実は近年、意外に細かいところをついてくる問題が多いですよ。

14条の「理由の提示」では、例外の例外まで規定があるのでしっかり対策をしていないと思わぬところで足元をすくわれることになりかねません

それでは、ひとつひとつ見ていきましょう。

定義(2条)

この条文では、不利益処分の「対象」「対象外」を学んでいきます。

不利益処分の対象になるもの・ならないもの

行政書士試験では、なにが「対象」でなにが「対象外」かという問題がよく出ます。
例えば「許認可等を拒否する処分は不利益処分にあたるか?」のような問題です。対象となるものと対象外となるものの表を作ってみましたのでご確認してみてください。

対象
  • 法令に基づく義務、又は権利を制限する処分。
    (撤回や取り消し)例:営業停止処分
対象外
  • 事実上の行為
    1行政上の強制執行
    2即時強制
    3行政指導
    4公表等

  • 事実上の行為に法令上必要とされている手続処分(行政代執行の戒告等)
  • 許認可等を拒否する処分(申請に対する処分)
間違えやすいのは、事実上の行為

「事実上の行為」は不利益処分か?という聞かれ方はあまりされず、

不利益処分にあたるのはどれか?

・戒告に従わない場合の行政代執行
・保健所からの行政指導
・市長の指導に従わない場合の店名の公表

このように、かなり細かく聞いてくる場合が多いです。どれも不利益っぽいのですが正解はどれも✖になります。

「事実上の行為=✖」と暗記で覚えているだけでは、この問題は解きづらいですよね。事実上の行為とは何かを理解する必要があります。

”法律に基づく”と”事実上”の違い

事実上の行為とは法律に基づかない行為です。
”法律に基づく行為”の対義語が”事実上の行為”であります。

  例えば  
近年、営業自粛要請(行政指導)に従わなかったパチンコ店が公表されましたよね。これは不利益処分ではないです。
なぜなら、行政指導は「法律上の強制」ではなく、法的効果のない「行政上の任意要請」であるからです。
この件で世論からは、「自粛要請だからだめなんだ!もっと強制すればいいのに!」なんて声が上がっていましたよね。
法律上強制できる 「営業停止」などとは性質が違うことがわかります。

つまり、事実上の行為とは「任意の処分」という考え方なのです。
任意なのですから嫌なら従わなければよい。だから「不利益」な処分ではない。ということです。

まとめ

〇法律上の処分
(営業停止処分など)

✖事実上の行為に必要な処分
(行政上の強制執行や即時強制、公表、行政代執行の戒告など)
✖許認可などの拒否処分

処分基準は努力義務(12条)

12条は、「努力義務」と「法的義務」かの選択問題がよく出ます。

Atsushi
Atsushi

まずは、12条の条文をチェック!

12条(処分の基準)
1 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。
処分基準は、努力義務です。なぜなら、不利益処分するかどうかは臨機応変に対応しないといけないからです
  例えば  

営業停止処分をする際は、そのお店の事情も考慮したうえで、本当に営業停止にするべきかを協議する必要があります。

もしかしたらルールを逸脱してしまったのには正当な理由があったかもしれません。何でもかんでも営業停止にしないで、臨機応変に対応してあげるのが正義だからです。

※審査基準は法的義務なのに対して、処分基準は努力義務なので間違えないようにしましょう。

審査基準/処分基準などの比較表
定めること公にすること
審査基準

義務

原則 : 義務
申請に対する標準処理期間

努力

定めたとき: 義務

処分基準

努力

努力

処分基準には標準処理時間の規定なし
(聴聞次第だから)

審査基準の知識を確認してい方はコチラ↓

不利益処分をしようとする場合の手続(13条)

13条は「聴聞」の前にすべき手続事項が条文になっています。

「意見陳述のための手続」は、法的義務

Atsushi
Atsushi

条文CHECK!

13条(不利益処分をしようとする場合の手続)

1. 行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、
当該不利益処分の名あて人となるべき者について意見陳述のための手続」を執らなければならない。

不利益処分する前に「ちゃんと相手に事情を聞いてから検討するべき」という意図を持つ国民に優しい条文です。

「意見陳述のための手続」は2種類あります

  1.  聴聞  → 口頭審査主義の正式な手続
  2. 弁明の機会→ 書面審査主義の簡略な手続
聴聞
  • 許認可等を取り消す処分
  • 名あて人の資格又は地位をはく奪する処分
  • 名あて人が法人である場合、その役員の解任を命ずる処分
  • 名あて人に従事する者の解任や除名を命ずる処分。
  • その他、行政庁が相当と認めるとき
弁明の機会
  • 聴聞手続が必要な場合以外

また「意見陳述の機会」がいらない時もあります。

例外!意見陳述がいらない場合
  1. 緊急の場合
  2. 不利益が軽微な場合
  3. 金銭に関わる不利益処分(金銭の納付など)
意見陳述の機会をとらずに不利益処分をしても、処分後に当該手続を求める規定はありません。
Atsushi
Atsushi

例外や補足事項が意外と出題されたりします…

意見陳述の機会まとめ
  • 意見陳述の機会は「法的義務」
  • 種類は「聴聞」と「弁明の機会」の2種類
  • 種類分けは、表を参照

理由の提示は必要か(14条)

14条は、不利益処分が決定した場合に理由を提示するのかどうかの規定です
  1. 原則
  2. 例外
  3. 例外の例外
  4. 理由提示の形式

の4つをお伝えします。

原則:処分と同時に示す

14条(不利益処分の理由の提示)
行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し同時に、不利益処分の理由を示さなければならない。
不利益処分をする場合は、同時に理由を示します。
営業停止するのに理由の提示なく出来るわけがないですよね。

誰に?いつまでに?を今一度把握しておきましょう。

例外:相当な期間内に示せば足りる

ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、処分と同時に示さなくてもよく処分後相当な期間内に示せば足りる。

理由の提示時期についてですが、例外規定があります。

  • 原則は、同時
  • 例外は、相当な期間内
このように、緊急性があるときは、理由を提示すべき期間が変わります。
試験問題では、
不利益処分をするときは相当な期間内に理由を示せば足りる
不利益処分をするとき差し迫った必要があるときは、相当な期間内に理由を示せば足りる
このような言い回しのひっかけが想定されます。

例外の例外:理由を示さなくても良いとき

例外の場合において、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他、理由を示すことが困難な事情があるときはその限りでない。

こおように、相手方に対して理由を示せる状況ではない時は示さないで良いということです。

不利益処分をするときは、いかなる場合でも相当な期間内に理由を示せばなければならない。
このように「いかなる場合でも」という言葉に置き換えてくることが多いです。

処分を書面でするときは、理由も書面で示す

こちらは、理由を伝えるのにどんな方法をとるかの条文です。
原則や例外に関係なく
 不利益処分を書面でするときは、理由も書面により示さなければならない。
と書いてあります。
これは、「申請に対する処分」の時と同じですね。書面の時は理由も書面とセットで覚えておきましょう。

表で整理(14条)

理由の提示
原則例外例外の例外
処分と同時相当な期間内(例外時で、困難な場合)
示さないで良い
処分が書面なら、理由も書面

まとめ

まとめ
  1. 「事実上」とは法的効果の無い行為こと
  2. 処分基準は、努力義務
  3. 「聴聞」と「弁明の機会」を使い分ける
  4. 理由の提示「原則~例外の例外」までをチェック

条文引用元

コメント

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