行政手続法の行政指導って具体的にどんな行為?
- 従わなかった場合はどうなる?
- 「公表」は不利益処分にあたる?
- 「口頭」で行政指導した場合の公示方法は?
を分かりやすく知りたい。
そんな悩みに答えます。
- 行政指導とは
- 行政指導に従わなかった場合の規定
- 不利益な処分や扱いとは
- 口頭で行政指導した場合の規定
✔︎この記事を信頼性
野球一筋で、全く勉強してこなかった僕が、
2年間予備校でみっちり行政書士の勉強をして行政書士資格を取得。
・予備校で学んだ分かりやすい解説
・自分なりに発見した誰でも理解できる勉強法
を昔の自分でも分かるように、素人目線で解説していきます。
✔︎読者さんへの前置メッセージ
行政指導のパートは必ず得点源にできます。
しかし、細かい規定も多く完璧に理解できていない方が多いのではないでしょうか。
「行政指導とは何か」ということを、もう一段階深堀していくと、自然と理解ができてきます。
この記事では、
条文ごとに事例を使いながら、「行政指導」について分かりやすく解説していきます。
私は手続法はかなり自信を持って試験に臨めましたので、その知識をお伝えしたいと思います。
テキストだけでは掴みきれない部分まで深堀りをしていきます。
それでは、早速見ていきましょう。
行政指導とは
行政指導とは
行政機関が特定の者に、一定の作為又は不作為を求める行為
したがって行政指導は、不利益処分ではありません。
行政が、国民に不利益処分をしようとする前に行う一個手前の行為。
特定の者がルールに反する行為をしていたときに、いきなり厳しい処分をするのは可哀想なので「まずは注意をしましよう。」という為の規定。
例えば、飲食店が衛生上良くない食品の管理をしていた場合に、行政(保健所)から指導が入ります。
- 生レバーを提供しているお店があると聞きつけた保健所の職員(行政)がそのお店に立ち入り調査をし、食品提供方法が法律や条例に違反していないかを確認し指導、勧告をする行為
この事例の延長線上で、
「あなたのお店は営業停止だ!」となればそれは、不利益処分ですが、
今回は指導や勧告が目的なので行政指導です。
行政指導に従うかは「任意」
行政指導を受けても、必ずしも指導に従わなくても良いです。
先ほどの飲食店に事例で言うと、
保健所の立ち入り検査を拒んでもいいですし、もし検査で何かを指導されても無視をしても法的には問題はありません。
なぜなら、行政指導には法的拘束力がないからです。
法的拘束力とは
法的拘束力とは、「約束を守れ!」と法の力を使って言えること
例えば
- 納税義務…法的拘束力あり
- 保健所の立入り検査…法的拘束力なし
納税は、国民の義務であり、無視をすれば違法となり逮捕される事態になりかなませんが、
立ち入り検査を拒んでも違反にはなるかもしれませんが法的には問題ありません。
なので、行政指導に従うかは任意でいいのです。
行政指導の限界(任務範囲外は行政指導禁止)
法的拘束力が無いのは行政も一緒です。
例えば、
法的な根拠が無くても、「噂話で聞いたから!」との理由で立ち入り検査する時できます。
しかし、何でもかんでも権利行使を許してしまうと、行政の力が濫用される可能性があるので、
行政側には「任務外のことはやるなよ!」という限度を定めています。
条文と照らし合わせてみましょう。
例えば、食品課の職員がお店に立入検査をした際、建築上の違反を発見した。
その場合、食品課の職員は、建築に関する行政指導をしてはいけない。
みたいな感じです。
これは、手続法の目的条文にあるように、行政の透明性を守るため。
行政指導に従わない場合
さて、行政指導のことが分かったところでこのテーマに移ります。
行政指導は従うかは任意で良いことは理解したけど、
その場合どうなっちゃうの?
結論は、従わなくても不利益な処分は受けません。
理由は、無視したからといって不利益な処分をくだすのは、ただの嫌がらせであり、本来指導したい本質からずれているからです。
【本質】違反を是したい
【処分理由】指導を拒んだから
行政の気持ちは分かりますが、これだと指導の目的が変わってしまってますよね。
飲食店が行政指導(立ち入り検査)に従わなかったことを理由に、営業停止にしたりしてはいけない。
「無視したからって処分してんじゃねえよ!」ってことです。
ただし、この場合は適法な処分です。
行政指導(立ち入り検査)をした結果、飲食店側に著しい欠陥が発覚したので営業停止(不利益処分)にした。
事例AとBの違いは分かりますよね。
あくまでも、
従わなかったことを理由に、不利益な扱いは受けないという事です。
事例Bのパターンは試験には出ないけど、ここまで分かれば事例Aが腹落ちするよね。
また、補足条文として、このようにも定めています。
行政指導を拒んだらそれはそれで終わり!です。
基本的に、行政から国民を守る為のルールが詰まっているよ。
「氏名の公表」は不利益な処分にあたるのか
ここ、ややこしいですよね!
結論、不利益処分に当たりません。
いやいや、氏名なんて公表されたらめっちゃ不利益じゃん!
言いたいことは分かります…。
以下の規定が、行政指導に組み込まれています
公表はあくまでも行政指導の一環という扱いなのです。
公表は処分ではなく、「行政指導の一つ」と覚えてもいいでしょう。
最近では、パチンコ屋さんが営業自粛要請(行政指導)に従いませんでした。
困り果てた行政が店名を世間に公表していましたね。
あれは不利益な処分ではなく、行政指導の規定内の行為だったんですね。
行政の権利も守らないと秩序が保てないでしょ?
- 不利益な扱いを受けない(営業停止にならない)
- 行政指導を断れば、それ以上は権利行使もされない
- 「公表」は行政指導の一環
行政指導の方法
行政は、身分や指導内容をしっかりと示した上で行わないといけません。
いきなり知らない人から「行政指導にきました!」と言われても信憑性がないですし、相手方は困ってしまいますよね。
- 相手方に何を伝えるのか
- 口頭で伝えるのか書面で伝えるのか?
を解説します。
行政指導の際は”趣旨/内容/責任者”を明確に示す
行政は、行政指導をする時に相手方に対して指導内容の詳細を伝える義務があります。
具体的には
- 趣旨
- 内容
- 責任者
以上の3つを、相手方に対して明確に示さなければいけません。(35条)
これも行政の仕事の透明性を図る為ですね。
試験では、
- 「趣旨/内容/責任者」
- 「相手方に」→「利害関係者にも」
の入れ替え問題も想定されます。
相手方に、趣旨/内容/責任者を明確に示す。
このフレーズをしっかり覚えておきましょう。
行政指導の方法は口頭か?書面か?
行政指導は、基本的には書面で行われることが想定されています。
わざわざ指導しにきて言うだけ言って帰るのも変ですよね。
伝えたいことはちゃんと書面にして行います。
口頭でする場合
内容が軽微な時などは口頭で行うこともあります。
試験で問われるのはこっちの方です。
口頭でも良い理由は、全て書面にすると行政の資料作りが間に合わないから。
軽微な時とは、例えば口頭注意レベルで終わるものです。
大手携帯会社の端末代が「実質0円」になっている仕組みを問題視をして「口頭注意」した。
みたいな感じです。
別に詐欺をしている訳でもなく、値段が高すぎる訳でもなく、「0円って商売的におかしくない?」っていう指導内容です。
こういった軽微な注意は口頭でもOKです。
僕らの世界でいう厳重注意ってやつだね。。
口頭で行った行政指導に対して、書面の要求された場合
行政指導を口頭でする場合、こんな規定があります。
例えば、「正式な文書でくれよ!」と相手方が主張したパターンですね。
しっかりとした経営者は、軽微な注意も真摯に受け止めて書面を要求します。
その場合は、行政は忙しくても書面を用意する必要があります。
ここでは注意事項があり、書面を求めていいのは「相手方のみ」で、「利害関係者」からの要求はできません。
相手方から書面を求められれば、書面で示めせば良いのです。
書面を要求されても示さなくてよい2つの場合
基本的には、相手方から行政指導を書面で求められれば書面で示さなければなりませんが
以下の場合は、書面でする必要はないです。
- その場において完了する行政指導
(例えば、火災時に避難しろ!と口頭で勧告する時) - 既に文書や電子的記録にて相手方に通知している場合
確かにこの場合、書面で示す意味がありませんよね。
この2パターンは覚えておきましょう。
試験ではこんな記述式も想定できますよ。
行政指導を口頭でするときは、相手方から書面の公布を求められたが、書面で示さなくても良いときはどんなときかを2つ書きなさい。
こういう例外の例外みたいなものは、見逃しがちになるので気を付けましょう!
- 相手方に、趣旨/内容/責任者を明確に示す
- 軽微な行政指導は口頭でもOK
- 口頭の場合、相手方から書面の公布を求められれば書面で示さなければいけない
- 書面でする必要はない時もある
まとめ
本記事では、
- 従わなかった場合の規定
- 公表は不利益な処分なのか
- 口頭で行政指導した場合の公示方法
など細かい規定が多い分野です。
条文だけではなく、ここまで深掘りしていくと理解が深まりますよね。
ここで学んだら一度過去問を解いてみましょう。
それでも解らなければまた本記事に戻ってきてください。
それの繰り返しです。
行政指導指針や行政指導の中止の求め、処分等の求めは次の記事で紹介します。
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